2007年12月30日
◆ダン・ブラウン [ダ・ヴィンチ・コード 上・中・下]
映画版が全世界同時公開する前にカンヌで不評など、連日話題に事欠かない話題作をチェック。王道過ぎるくらいハリウッド・エンタメな筋運びと、丁寧で破綻や矛盾の無い伏線の消化など手堅い作りがお見事。
もしマンガ化するなら矢張り「MASTERキートン」的に浦沢直樹? 確かアレもジャン・レノなキャラが居た記憶が。
個人的に、全体的な構成や似た様な宗教儀式を扱ったところに、京極夏彦の「狂骨の夢」を想起するも、割とマニアック志向な京極作品が持つ衒学趣味と詩的な内面描写を省き、読み易く軽快な展開にした事が今作の大ベストセラーになった勝因だと思う。
・小説版 公式サイト (webKADOKAWA)
・映画版 公式サイト (Sony Pictures)
ほぼリアルタイムな時間軸、同時進行する事件、など、かなり「24」っぽい展開から、寧ろドラマ化の方が向いている気がした。著者はアメリカ人だし執筆当時ハマっていたのかも、と邪推。
まぁ、ミステリとしては平均以下と云うか、登場人物より先に暗号や真相が判ってしまうタイムラグが目立った。
例えばニュートンと云えばまず思い浮かぶ単語がそのままキーワードだったり、拍子抜けしたり失笑してしまったり、と云う繰り返し。敢えてスカした意図があったのかもしれないけれど。
「聖杯伝説」にしても、ちょっとしたミステリ好きなら既知なネタだし、心底「うぉぉ!」「な、何ィ!?」みたいに驚く箇所が無かったのは残念。
でもラストは綺麗に纏めて仄かに感動出来るし、ソフィーと祖父の絆を描いた描写などでフォローしてるんで満足度は高し。
映画化に際し、アクの無い職人監督であるロン・ハワードが選ばれたのも判る気がする。
トンデモ度とエンタメ度の高さで云えば、「キリストはエイリアンで、ユダは彼による人類侵略を阻む為に戦った」と云う展開の「エイリアン黙示録」の方が上かも。
実在の組織に触れる事で、一部から非難が出てる箇所も充分許容範囲。オプス・デイにしても充分過ぎる程フォローしてるんで問題無いでしょ。
寧ろシオン修道会の「儀式」の方が抵抗ある人多い気がするけど。映画じゃどう表現するんだか。
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2006年04月15日
 | どーもー。魔海キャンディーズでーす。 |
先日貰ったバトンでも「生まれて初めて出逢ったエロスとバイオレンス」に挙げた、既に20年以上敬愛する超伝奇作家・菊地秀行の特集ムック。
代表作「吸血鬼ハンターD(書下し短編も収録)」「魔界都市」「エイリアン」シリーズなどをはじめ、主要作品を豊富に網羅したデータベースとして充実した出来。
ところで、最近菊地先生のお気に入りは「南海キャンディーズのしずちゃん」だとか。確かに外谷さんの流れを汲むなぁ、と納得しきり。
・菊地秀行ファンクラブ ※唯一の公認サイト。情報の充実度は流石の一言。
・怪奇幻想シアター ※クトゥルー神話などに造詣の深いサイト。
二年前に出た「文藝別冊」は、こちらの感想の様に低クオリティなイラスト等で無駄が多い構成だったので今回のはまずまず一安心。
ただ、大満足って訳でも無いので、「文藝別冊」と二冊併せて丁度良しってところ。
ところで、同時刊行された夢枕獏の特集本と比べて今作の売り上げランキングが段違いに高いのが意外。一般的に「陰陽師」などの成功で夢枕さんの方が知名度は上かと思ってたので。
以下、各作品の私的ベスト。
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[吸血鬼ハンターD]
 | ジュニアとじいや。 |
これが最初の菊地作品。多分、アニメ化と同時に買ったような記憶が。
主人公のハンターを、吸血鬼と人間のハーフ(ダンピール)と云う斬新な設定にした事により、凄惨な同族狩りの宿命や「妖怪人間ベム」「サイボーグ009」と通じるマイノリティの苦悩などを持たせ、子供心にズシリとインパクトを与えてくれた。
<"D"-妖殺行>
「吸血鬼と人間の悲恋」と云うロマンティック要素と、シリーズ中最もバランスの取れた強敵・マーカス兄弟との死闘がメリハリを効かせた傑作。
<"D"-北海魔行>
二転三転の真相。三つ巴、四つ巴と変動する敵対関係、そして思わず頬が緩む人情ものエピソードの配分など、一つのピークを迎えたと云える。
これ以降の作品ではDの敵やパートナーに吸血鬼が矢鱈増えてくるので、あらゆる能力が見事なバランスで描かれた「人間」の敵達が見られるのも今作の魅力。
<風立ちて"D">
人間の醜さを徹底的に掘り下げ、果たして貴族は本当に悪なのかと問題提示し、ラストに至るまでの哀し過ぎる運命が切ない。
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[エイリアン・シリーズ]
 | トリプルGの男。 |
あらゆる武器や戦闘術を使いこなし、敵味方問わず女性を簡単に籠絡。湯水の様に賄賂をバラまき、ヤクザが何人死のうが知った事かと嘯きながら情には熱い高校生トレジャーハンター・八頭大。「007」より「ルパン三世」より彼こそが子供時代のヒーローだった。
Dやせつらに感じる魅力は畏怖を伴ったものだけれど、文体が一人称の所為もあり感情移入し易いのも熱中出来る理由のひとつ。
<エイリアン黙示録>
何故ユダはキリストを裏切ったのか。この疑問へ一つの解答を示した驚愕のストーリーテリングにグイグイ引き込まれる。予言の成就が非常にユニークで、時にはユーモアを以て描かれるのも菊地作品ならでは。
<エイリアン魔獣境>
まさに王道アドベンチャー。「インディ・ジョーンズ」を意識しつつ、多彩な最先端装備や魅力的なライバル達との闘いが息つく暇を与えない。
<エイリアン妖山記>
続く「邪海伝」と併せ、古来から伝わる民話をモチーフに、自然の持つ恐ろしさが体感出来る作品。「山」から脱出出来ない理由が明かされる下りには感嘆するしかない。
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[魔界都市ブルース]
 | 男臭さ担当。 |
「ハリポタ」や「ロード・オブ・ザ・リング」みたく別世界に行かずして、この世に「ダーク・ファンタジー」を現出させた「新宿」。
この世界こそが主役であり、そこが在り続ける限り魔人の誕生が絶える事は無い。
とりあえず、新宿そのものである秋せつらの作品のみピックアップ。ちなみにメフィストで好きな台詞は「ドクター・メフィストの針金細工。とくとごろうじろ」。
<魔界都市ブルース1 妖花の章>
始まりにして最高傑作のひとつ。初期はブルージーンズ姿でバイクに乗っていたのも懐かしい。Dと同様、どんなに苦戦しても涼しい顔で必ず逆転する、程良い危機感も的確。特に「影使い」戦で敵をいたぶりながら放つ「私は愉しくて仕方が無い」は身震いする程恐ろしく魅惑的な台詞。
<魔王伝>
最大のライバルであり、せつらのシャドー的存在である幻十の魅力バランスがいい。イメージカットを重ねつつ、決戦のドタン場で繰り出される「技」には度肝を抜かれた。クライマックスのカタルシス感で今作を越えるものは未だ無い。
<夜叉姫伝>
最大最長の一大叙事詩。当時、新聞の広告に割かれたスペースの大きさにも驚いた程の大ヒット作。
個人的にはありきたりな性格の妖姫より、彼女に従う者達の方へ魅力を感じる。特にカズィクル・ベイ将軍の残虐で豪放偕楽でありながらセンチメンタルなキャラには不思議な好感が。せつらと死闘の末、バスが向かった先での壮絶な最後は、伏線と見開きイラスト含め思わず「おぉ!」と感嘆の声を出してしまった屈指の名シーン。
後は「双貌鬼」と、描き始めは「闇の恋歌」だったであろう「緋の天使」が次点。「緋の〜」は老婆を躊躇無く惨殺するせつらの冷酷さと復讐の怒りにおののいた。
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[その他]
 | ビニール袋の中身はなあに? |
<風の名はアムネジア>
ジュブナイルとして誰にでもお勧め出来る最高傑作のひとつ。人間の持つ尊厳、醜さが博愛と冷徹さを以て描かれ、「ガリバー旅行記」の様に、ワタル達が訪れる土地の多彩ぶりも大いに楽しめる。
「凶悪な連続殺人犯が、車にひかれそうになった子供をかばって死んだりする」人間と云う生き物が持つ不可解さを表した下りは未だに好きな一節。
<ブルー・マン 神を食った男>
冒頭に書いたバトンでも取り上げた、エロスとヴァイオレンスを徹底的に突き詰めたピカレスクの金字塔。これはお子様の教育には断じて薦められない、と思いつつも、これを読んでこそ「人間」を知る事が出来るのでは、とも思う。
「ドS程打たれ弱い」と云う真理を教えてくれた作品でもあり。
<妖神グルメ>
ハエや自分の汗などを混ぜ込んだゲテモノ料理が何故か神懸かり的に美味い、と云う菊地秀行の美意識が持つもうひとつの「異常な世界」がクセになる。余り興味の無いクトゥルー神話を小林泰三と並んで自分好みに咀嚼吸収している展開も印象的。
ただ、ラストが「悪癖」である尻切れトンボになっているのが残念無念。まあ「キラー・ネーム」よりは遥かにマシだけれど。
他には吸血鬼をテーマにした短編集「黄昏人の王国(またはトワイライト・レディ)」や、車田正美的世界の「魔人学園」なども好き。
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[CD/DVD]
マンガやアニメ化作品など、夢枕獏に比べて余りこのジャンルは恵まれない印象があるけれど、その中でもクオリティが高い三つがこれら。
悪評高い芦田豊男版の「D」は確かに酷い出来ながら、小室哲哉の哀愁ある音楽はなかなか良し。
「妖獣都市」は冒頭からセックスシーン、後半も輪姦など両親と観てて非常に気まずかった思いがあれど、後の「D」に続く川尻善昭の美意識に痺れた。
そして「D」のオーディオ・ドラマは、故・塩沢兼人の美声にまさに酔いしれる作品ばかり。先述した「D」のベストエピソードとシンクロしてるのがまた嬉しい。
ちなみに「妖殺行」と「北海魔行」の脚本は、アニメ版「鋼の錬金術師」の会川昇(現・會川昇)。カラッとした原作の「ハガレン」をジメジメと鬱屈した展開に変えた手腕が、ここでは上手くマッチして聴き応え十分。
ただ、音しか無い所為か、小説版に比べDの感情表現がやや豊かで少々おしゃべりなところがやや違和感。今となっては贅沢なクレームだけれど。
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2006年04月04日
◆飯田譲治 梓河人 [盗作]
「アナン、」から6年。「アナザヘヴン2」からも2年振りになる飯田譲治×梓河人コンビ待望の新作。
飯田譲治自ら「構想17年」と自信を以って提示する今作のテーマは「盗作」。
全てのクリエイターにとって禁忌である「それ」に生涯を翻弄された一人の女性・彩子が、何処にでもいる平凡な人間である設定に面白さと残酷な不可解さを覚えずにはいられない。
ただ、これから読もうと云う飯田ファンには、余計なお世話ながら「アナン、」の様なスピリチュアルな感動は求めない様に、と述べたい。どちらかと云えば「トワイライト・ゾーン」や「世にも奇妙な物語」の様な印象で臨んだ方が無難な気がする。
以下、ネタバレ注意。
・「盗作」試し読みサイト (講談社)
・飯田譲治倶楽部 ※公式サイト。
クリエイターに限らず、大抵の人間にとって、何気なくTVを観ている時、シャワーを浴びている時、うたた寝をしている時、主に「無意識」の状態にさらされている時、不意に「何かが降りて来る」瞬間が多かれ少なかれある筈だ。
煮詰まっていた仕事や解けない試験問題に呆気無く打開策、答えが浮かんでくる、なども「それ」に含まれると思う。
だから、平凡な主人公・彩子に起こる、と云うより起こってしまう現象がありふれたものではなく、如何に常軌を逸しているかを伝えるのが、読者の心を掴む為の最初の関門だ。
自分にとって小説の善し悪しは、登場人物の心理や情景描写如何にかかってくるが、まるで彩子の強烈な体験を無理矢理シンクロさせられる様に読む者の脳を直撃する筆致は、「Night Head」第一巻において、凄まじい悪意の嵐が吹き荒れるシーンを息詰まる迫力で描き切った時から健在だ。
加えて今回は、冒頭のオレンジに輝く夕陽などの風景も情感たっぷりに描くなど円熟味も増し、最近のヒット小説が会話メインになり、描写部分がト書きレベルの味気無いものになっている中で、言葉の持つ魅力を改めて実感させてくれたと云う嬉しさもあった。
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だが、珍しく、と云うかこれまで賛辞を惜しまなかった飯田×梓作品の中で、今作には現時点では「傑作」との評価は下せない状態だ。
例えば、コンセプトである「盗作」をストレートに本書タイトルに据えたのは、ある意味失敗だったかもしれない。
何故なら、劇中、如何に彩子の神秘的な体験で生まれた作品が素晴らしくとも、それが盗作なのでは、と云う不穏な空気が常に読者の脳を覆い、安堵を許してくれないからだ。
特に、この物語のユニークな点であり、これまたもうひとつの欠点と云える展開、つまり彩子が絵、音楽、小説とその創作の場を変えていく中でもその疑念はどんどん膨らんでしまい、彼女の小説が今度こそ盗作にならなかった、と判ってもなお、「いや、きっと何か横槍が」と、素直に祝福出来なかった向きは多い気がする。それも悲劇の多い飯田作品のファンであればある程、だ。
勿論、この緊張感こそ作者の狙いだとは思うのだが、彩子の二度に及ぶ転落描写が過酷な為、いくら幸福を紡いで彩子が安堵しても、疑り深い自分は中々その呪縛から抜け出るには至らなかった。
そして、先述したもう一つの問題点である「創作の変遷」。
主人公をあえてクリエイターではなく平凡な女性と云う設定にした為、創作への苦悩と云うより奇妙な運命に翻弄される一種の悲劇、と云う部分がメインになってしまったのが些か頂けない。
これは、恐らく読者の殆どが彩子同様「創作」に縁が無い、と云う事で感情移入し易くしたのだろうとは思うが、その所為で、心からものを作っている人々に対し一種の冒涜になっている気がするのだ。
一応、紫苑はそのクリエイター代表ではあるのだろうが、彼女は寧ろ彩子にとって幸福を崩壊させる、ミューズの神を妬む何者かが送り込んだ刺客の様な印象が強く、宿業の凄さは感じるが創作とは何か、と云う疑問へ別の回答を提示してくれる訳では無い。
実際、彩子の作品は、大いなる何かに動かされて「作らされた」と云う感が強い。自主性が欠如しているのだ。結局、彼女は最後まで「クリエイター」ではなく「中継者」の様に終わっていく。
しかも、彼女の盗作事件の所為で有形無形の被害を被った筈の画家の黒沼や野弓、鞍馬や桜など他のキャラのその後が描かれないのがまた腑に落ちない。良くも悪くもハリウッド的と云うか、彩子の人生を描く為だけの捨て駒的な印象さえ残る。
ラストで彩子はスピリチュアルな幸福を得て死んでいくが、その彼らに対する贖罪の様なものは見当たらない。悪い云い方をすれば、彼女に関わった者の人生を狂わせたまま、自分だけ幸福になった、とも取れてしまう。
その点で結末を100%喜べなかったのも残念だ。まあ、人生は平等では無くそういうものだ、という意図だったり、クリエイターとして生き抜いてきた作者の厳しい人生観なのかもしれない。ただ、せめて彩子の「次」を知った時の彼らの反応くらいは描いて欲しかった。
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とは云え、冒頭に書いた様に、それは「アナン、」と同じ感動を望んでしまった自分の先入観にも問題はあると思う。
繰り返すが、これは壮大な「トワイライト・ゾーン」だと思って読めば良かったのだろう。
現にエピローグでは、かつての彩子の様な境遇に立たされる青年の下りで感動よりも神秘的な畏怖を覚え、「シックス・センス」や「ヴィレッジ」の様なM.ナイト・シャマラン監督作を想起した程だ。
果たして青年は、彩子の遺言によって救われたのか。あの後も創作を続けるのだろうか。
読後暫くは、作者が提示した「創作の秘密」は何と荘厳で残酷なのだろう、と一種の恐怖感に浸ってしまった。矢張り飯田譲治は恐ろしい・・・。
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2005年12月29日
◆三谷幸喜のありふれた生活 4 冷や汗の向こう側
人気エッセイシリーズ第四弾。これまでどちらかと云えば「雑記」「日記」な印象だった文体が、一つの「私小説」と云うか、詩的な香りも感じさせる一編もあったりと、「エッセイ」というスタイルも確立したのかな、と思える変化が面白い。
個人的に意外だったのが「新選組!」ネタで、本編のビデオやムックを観るより当時の心境を何ページかめくるだけで「復習」出来てしまった様な感覚に捉われた。
年明け、三谷四連発なタイミングでの出版も心憎い。
・新選組!!
・古畑任三郎 ファイナル
・THE 有頂天ホテル
・12人の優しい日本人 ※WOWOWにて生放送。
投稿者 UT : 00:00
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2005年09月06日
『邪魅の雫』発売予定日について訂正とお詫び (講談社BOOK倶楽部)
上記サイトで以前9/22発売とされていた「邪魅の雫」が、噂通りやっぱり発売不可だと正式発表。
この件に関しては京極さんの公式サイト「大極宮」の「週刊大極宮」第218号(9/2)の氏のコーナーでも、もー推敲もしてなさ気な、必死に理性を保ちつつ怒りを連ねた文章が・・・。
やっぱり仕事をする上で「ホウレンソウ」は必須ですね。「嫌がらせ」でないとすればw
大極宮
投稿者 UT : 15:42
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2005年08月18日
「六儀」と書いて「台本」と読むそうな。即座に某少年みたく「ないないw」って思ったけどホントらしい。ロバートの愛称がボブってゆーくらい信じ難い。
桜木と書いてバカならまだ判るけどねー。
今作は京極夏彦がこれまで書いた落語・狂言を収録したもの。三谷幸喜のシナリオ集並みにスッと眼前に光景が浮かぶ筆致は流石。
でも、それより分冊版の「狂骨〜」の帯に書いてる「邪魅の雫」9月発売の告知に心を奪われるのでございます。正確な日付を人魂らしきもので隠してるのが、らしいっちゃあらしいかと。
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投稿者 UT : 00:31
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2005年08月12日
クトゥルフ神話、ハードSF、ナンセンスギャグ、人情話、かけあい漫才と、数多の要素を吸収・混合する異能作家、小林泰三・初の長編ホラー推理小説・・・もどき。
映像化するなら「金田一少年〜」「ケイゾク」の堤幸彦、漫画化なら荒木飛呂彦がピッタリな叙情と狂邪溢れる探偵小説・・・もどき。
続編が読みたいかと問われれば頷くが、続編が読みたいですと切望はしない。そんな奇妙な魅力をたたえた作品。
小林泰三の不確定領域
小林泰三 - Wikipedia
※講釈途中に突然ネタバレしています。
自分は一つのジャンルを突き詰めていくタイプより、己の個性を核に、あらゆる要素を貪欲に取り込んでいくアーティストや作家に惹かれる(このブログのエントリーも雑多な様に)。
例えばBUCK-TICKの今井寿や菅野よう子みたいに、誰かに紹介する時、簡単なジャンル名や語句で表せない人にとにかく魅力を感じてしまう。
菊地秀行、京極夏彦と並び、この小林泰三はそんな「異種格闘技」系作家の一人だ。しかも配分というものをまるで考えない。無論ワザと。
通常ならメインテーマを決め、それに付随するカタチで他要素を入れる、あるいは隠し味にするのだが、この作家は例えるならカレーの中にルーと同じ量の醤油をドバドバ入れてしまう人だ。それはカレーと呼べるだろうか。呼べなくはないかもしれないが、純粋なカレーとは云いがたい。
つまり本書もそんな「推理小説」もどきだと云いたい訳である。
だから純粋にその「ジャンル」を愉しみたい人には少々不愉快かもしれない。
いや、寧ろ本書はファンですらイマイチ、という評価を下している様だ。
何故なら、そのいつもの小林泰三らしさとも云える他要素が「中途半端」に散りばめられている程度、しかも肝心の推理自体も400頁に及ぶにも関わらず、京極夏彦の様な重厚で超絶な謎明かしでも、超自然的なオチになる訳でも無い。それを期待してはいけない。どちらかといえば2時間サスペンス、赤川次郎ミステリみたく、誰もが簡単に納得出来る軽いものだ。つまり完全な「期待外れ」「消化不良」だ。
だから「小林泰三」初体験には全く以て向いていないし、ファンに対しても場合によっては挑発的ともとれてしまう。
では本作は失敗作なのだろうか。そうは思えない。
「密室殺人」ではなく「密室・殺人」。密室があるのに死体は外。それぞれ独立して存在する「状況」。
読了後、この奇妙でどこか可笑しいシチュエーションこそが最大のミスリードだったと判る。
読者はクトゥルフを思わせる「邪神」という禍々しい存在(久都流布川なんて名前も出てくる)と、女性蔑視の悪意溢れる登場人物の間で揺れ動く。事件のシメは超自然的?人間の悪意?それとも両方?
他にも祟りを恐れる老人、「金田一少年」の様な雪山の伝説、殺人の関係者である新藤礼都(れつ)という女性の名がギリシャ神話のレト神にも思えてくる、など「エサのバラマキ」は徹底している。
つまり推理・伝奇モノを多少なりとも読んでいる読者なら余計に深読みし、惑わされる構成。
しかし、その推理は「全て報われない」w
邪神は、厳密には今後関連してくるかもしれないが、本書では単なる虚仮威しの装置止まり。他の要素も完全に途中で無かった事になってしまう。更に云うと「真犯人」は捕まらない(これは探偵ものでよくあるグレイな決着だが)
当然推理小説としてはダメダメだろう。平凡な謎が解かれても何のカタルシスも無い。憤飯ものというより、え?そんな単純な謎なの?とテンションが下がる。
ただそれは仕様がない。何故なら本書は、名探偵・四里川陣と助手・四ッ谷礼子の物語の「プロローグ」に過ぎないからだ。読者が推理しなければならなかったのは殺人事件の解明ではなく、「彼等の来歴」だったのだ。
期待させた謎が急速に萎んでいくのと反比例に、京極夏彦曰く「目立ってはいけない」筈の「探偵」自身の謎が大きく膨らんでいき、しかも説明なく終わってしまう。
はちきれんばかりに膨張した風船の所為で視界を塞がれたまま、そして僕は途方に暮れるw
平凡な謎を押し退けて陰惨な謎と伏線が現れ、終わる。これを「プロローグ」と云わずして何と云うだろうか。
冒頭に引用された「鏡の中のアリス」の台詞の如く、四ッ谷礼子にしか「見えない」探偵・四里川の正体は何なのか。著者は五つの解釈があると語る。そのヒントは本書では「ケイゾク」「眠れる森」のフラッシュバックの様に断片的にしか無い。
殺された男の死体は四里川だったのか。二人は恋人だったのか。死んだ彼の肉片を礼子は食べてしまったのか。それとも四里川は実在するのか。やっぱり幻覚。まさか幽霊なのか。「矢に貫かれた」との描写がある様に会話が出来るスタンドなのか?(実際これを解釈に含めている小林氏はジョジョファン)
まあ、一番綺麗で哀しい真相は、ヒッチコックの「サイコ」、「ファイトクラブ」の様な交互の人格交替なのだろう。今作では矢鱈礼子が蔑視され、彼女自身「女」である事を恨めしく思う箇所もある。
もともとそういう鬱屈した状況があった上に、自分をいつも護って導いてくれていた男が死んだ為、彼女はその喪失感と変身願望を「探偵の誕生」で昇華させたのだろう。
「密室・殺人」とは、礼子の、誰にも入る事の出来ない「心の密室」とそこに逃げ込まざるを得なくなった「喪失」を表すタイトルだったのだ。
ただそうだとしても、徳さんと四里川の会話は徳さんの冗談だったのか?など腑に落ちない点も多い。でもそれはプロローグだから現時点で知る事は出来ない。
今回はミスリード扱いだった邪神も、ちょうど封印が解かれた一年前からの連続殺人事件(四里川も被害者)に関与している筈だし、礼都が恋焦がれていた「依川仁」は「四里川陣」その人である可能性も高い。
このプロローグで解決した筈の事件の現場は「全ての始まりの土地」であり、物語のラストには再び戻って来なければならないだろう。
事態は動き出したばかりなのだ。
そんな訳で、続編が読みたいかと問われれば頷くが、それを覆う平凡なミステリにまた付き合わされるかと思うと、続編が読みたいですと切望はしない。そんな作品である。
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